男女共同参画センター らぷらす ホームページ 2009.7 No.59

一人ひとりを大切にするやさしい社会へ
性同一性障害の方への理解を

 「性同一性障害」という言葉はマスメディアなどを通じ社会的にも広く知られるようになりましたが、正しく認識している方はどれだけいらっしゃるでしょうか。
 2004年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行され、戸籍法上でも性別が変更できるようになり、2008年にはその要件が緩和されました。
 性同一性障害の方たちにとっては、どのような影響があったのでしょうか。
 はりまメンタルクリニックの針間克己先生にお話しを伺いました。


針間 克己 氏 針間 克己 氏 (はりま かつき)
1990年
東京大学医学部医学科卒業
1990年
東京大学医学部附属病院精神神経科入局
1991年
東京都立松沢病院にて研修
1992年
東京大学医学部大学院進学
1996年
東京大学医学部大学院卒業
1996年
鶴が丘病院勤務
1997年
東京家庭裁判所医務室勤務
2005年
東京武蔵野病院勤務
2008年
はりまメンタルクリニック開院


性同一性障害とは

 性同一性障害とは、「体の性」と「心の性」が一致しない状態のことをいいます。
 この障害では、幼少の頃から思春期にかけて、反対の性の遊びや娯楽を好んだり、スカートをはいていることに違和感を持ったり…というように、少しずつ自分の体の性別に対する疑問が強まります。その疑問はやがて苦痛に変わり、悩んだ末の10代後半から20代前半頃に「性同一性障害かもしれない…」と専門医の診察を受けることが多いようです。
 そして、何回かのカウンセリングや検査等を経て、まず医師が慎重に診断を行います。さらに本人の意志確認のうえで体と心の性別を一致させるための治療としてホルモン療法や性別適合手術を受けることもあります。
 同性愛(恋愛の対象が同性)や服装倒錯(別の性の服装を好む)と混同されることがありますが、これらは体と心の性が一致しているため性同一性障害とは異なります。
 性同一性障害の原因は明らかになっていませんが、生まれてからの環境のせいではなく、胎児期の性ホルモン異常などにより体と心の性が食い違ってしまうのではないかという考えが有力です。


常につきまとう苦悩の日々
 性同一性障害の方たちは、常に心と一致しない体でいることを悩み、嫌悪感さえ抱いていることもあります。生まれ持った性意識を体の性別に合わせることはできないのです。
 学校や会社では、体の性に合わせた制服の着用や、トイレ・更衣室の使用を求められるなど、さまざまな精神的苦痛を感じています。
 選挙の投票など公的な社会参加の場でも、見た目と名前の不一致から不快な思いをすることもあるようです。
 最近はマスメディアに取り上げられる機会も多く、性同一性障害への理解も進んできました。しかし、カミングアウトしたときに家族、学校や職場の理解が得られず、不登校や解雇につながったりすることも少なからず存在します。

2004年に戸籍上の性別変更が可能に
 社会的に性同一性障害の存在が認められ、2004年7月16日に施行された「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」では、戸籍上の性別記載を変更するための要件として、
(1)20歳以上であること
(2)現に婚姻をしていないこと
(3)現に子がいないこと
(4)生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
(5)その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
と規定されていました。
 2008年6月の法改正で「現に子がいないこと」が「現に未成年の子がいないこと」に変更され、子どもをもうけたことがある場合でも性別の変更が可能になりました。
 社会生活のなかで、すでに周囲の人たちの理解を得られている場合などは、戸籍変更もスムーズに受け入れられるようです。もちろん保険証などの公的な書類も変更後の性別で記載され、正式な結婚もできるようになりました。
 また、戸籍変更をしていない多くの人たちにとっても、周囲に正しい認識を深めてもらえる第一歩になったのではないでしょうか。
 しかし、戸籍変更はしたいけれども、未成年の子どもがいる、経済的あるいは健康上の理由で性別適合手術ができない、手術まではしたくない…などの理由から、戸籍変更を行えない方たちがいるのも現状です。
 こうした、戸籍変更をしていない方たちへの配慮も必要ではないでしょうか。

一人ひとりの理解がなによりも大切
 幼い頃から自分の性別に強く違和感を抱いている人にとって、周りからの「男らしく」「女らしく」という対応は苦痛でしかありません。また、こうした対応が本人の反発のみならずトラブルをも引き起こす場合が少なくありません。
 「こうでなくてはいけない」という決めつけや強要が知らず知らずのうちに性同一性障害の方を傷つけてしまい、社会的な孤独感や差別を生み出す結果になってしまいます。
 まずは、性同一性障害を正しく理解して欲しいと思います。そして、もっと大切なことは目の前のその人を理解し、思いやることです。
 たとえば、学校や会社の更衣室で「空いている部屋を使っていいよ」、銭湯で「開店30分前においで」と言ってくれる方もいるそうです。
 こういう柔軟性のある考え方や、ほんの少しの思いやりのあるひと言から、誰もが快適に過ごせるような社会がつくられるのです。
 これが差別や偏見をなくし、すべての人がその人らしく生きていける社会づくりの基本となるのではないでしょうか。


もっと詳しくは!
性同一性障害って何? 性同一性障害って何?
─ 一人一人の性のありようを大切にするために

出版社 : 緑風出版
発 行 : 2003年

性同一性障害と戸籍 性同一性障害と戸籍
─ 性別変更と特例法を考える

出版社 : 緑風出版
発 行 : 2007年

 


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